肝機能障害の原因・症状を徹底解説するサイト

HOME » すぐわかる! 知って安心・肝機能の基礎知識 » 肝臓から分泌された胆汁を濃縮・貯蔵する「胆嚢」

肝臓から分泌された胆汁を濃縮・貯蔵する「胆嚢」

肝臓と密接な関係にある胆嚢(たんのう)について

脂肪分の消化に重要な働きを持つ臓器

胆嚢とは、簡単にいえば脂肪を消化する「胆汁」を貯める臓器です。
胆汁は胆嚢で作られるもののように思えますが、実は肝臓で作られる消化液です。肝臓が生成した胆汁は、胆嚢に蓄えられます。蓄えられている間に塩分や水が胆嚢内で吸収され、胆汁が濃縮されるのです。

胆嚢の大きさや形

胆嚢は、肝臓と十二指腸を繋ぐ管の間にある、洋ナシのような形をした臓器です。長さ10cm、幅4cmほどの大きさをしており、およそ50~60mlの胆汁を貯蔵できます。

胆汁について

胆汁に含まれる成分

胆汁は胆汁酸・ピリルビン・コレステロールが混ざったアルカリ性の液体です。肝臓の中の肝細胞が常に作り続けており、一日におよそ500~800mlの量が作られます。

胆汁の成分は4つ

  • 胆汁酸・・・胆汁の主成分。コレステロールから生成されます。腸内を弱アルカリ性に保ち、腸内環境を整える働きと、脂肪酸や脂溶性ビタミン、コレステロールなどの脂肪分の分解・吸収に大きな役割を持つのです。
    胆嚢から分泌された後は、通常であれば腸内で吸収され、肝臓で再利用されます(腸肝循環)が、肉類を多く食べすぎると多くの胆汁が排泄されてしまうので、肝臓に大きな負担が掛かります。
  • リン脂質・・・胆汁酸とともに脂質の消化に大きな役割を持ちます。脂肪分を乳化させ、腸内で吸収させやすくするのです。
  • コレステロール・・・体の中で作られたコレステロールは、その8~9割が胆汁酸とともに体の中をめぐります。食べ物を消化する際にも、このコレステロールの1.1~1.6gが肝臓から腸内へ排出されます。体内の余分なコレステロールは、このコレステロール排出の働きによって便と一緒に排出されますが、コレステロールが多過ぎる場合、胆汁を貯蔵する胆嚢の中に結石を作ってしまうのです。
  • 胆汁色素(ビリルビン)・・・胆汁の色素の元となる物質。血液のヘモグロビンが肝臓で分解された後で生じる物質。胆汁と一緒に小腸へ分泌され、排便とともに体外へ出されます。排便の色もこのビリルビンが大きく関わっています。
    胆石や胆管癌により、胆汁がまともに排出されなかった場合、このビリルビンが血液とともに体内を巡ってしまい、黄疸などの症状が現れるのです。

消化による胆嚢のメカニズム

食事によって腸に食べ物が送られた時、消化管ホルモンである「コレシストキニン」という物質が分泌され、胆嚢を刺激。胆嚢が収縮して胆汁を出し、腸内で膵液と混ざり合って脂肪やタンパク質を消化するのです。

胆汁の役割

脂肪分の分解・吸収

胆汁には、膵臓から分泌される膵液の消化酵素を活発化させる働きがあります。胆汁と膵液は十二指腸で混ざり合い、腸内にある脂肪やタンパク質の消化・吸収を行うのです。

腸内環境を整える

胃の中は胃酸によって強い酸性に保たれていますが、腸内は腸液のほか、膵液や胆汁によって弱アルカリ性に保たれています。
腸が弱アルカリ性を保っている理由は、胃酸によるダメージを抑えることと、消化能力を活性化させることが挙げられます。強い酸性の胃液は食物と一緒に腸に流れると、腸の組織にもダメージを与えてしまいます。胃液による影響を防ぐため、アルカリ性の腸液や胆汁が胃液の酸を中和しているのです。

また、腸は弱アルカリ性の環境により食べ物の消化を効率的に行えます。消化酵素の中にはトリプシンなどのようにアルカリ性の環境下で活性化するものがあります。消化酵素を働かせるために弱アルカリ性の環境が必要なのです。

さらに、腸内が弱アルカリ性だと酸性を嫌う腸内細菌を活性化させることもできます。こうした菌は体内に入り込んだ食中毒菌などを排斥する働きや、消化しにくいタンパク質の分解・吸収を助ける役割があります。腸内が弱アルカリ性に保たれていれば、こうした菌の割合も保たれやすくなるのです。

不要な物質の排除

胆汁の中にはコレステロールも多く含まれています。胆汁酸やホルモン、細胞膜の原料となるコレステロールは体にとって必要不可欠の栄養素です。
しかし、人の体の中にあるコレステロールのおよそ8割は体内で合成されており、食べ物などで過剰に摂取してしまうと、すぐに許容量をオーバーしてしまいます。そこで、不必要な量のコレステロールは肝臓から胆嚢、腸へと胆汁によって送られ体外へと排出されます。
ほかにも、胆汁には幹細胞で処理された薬剤や有害物質、不要な老廃物を腸へ送り、体から排出させる働きがあります。

胆嚢・胆汁に異変が起きた場合

胆嚢・胆汁にはさまざまな役割がありますが、もしも何らかの理由で胆嚢や胆汁に問題が起きた場合、わたし達の体で一体何が起きてしまうのでしょうか?実は、関わりがないと思われがちな肝硬変などの病も、この胆嚢や胆汁の異常によって引き起こされているのです。

以下に、体にとって大きな被害をもたらす胆嚢の病気について記載しています。

肝硬変を引き起こす胆嚢の病気?!

胆嚢で起こる病気と聞けば、多くの人は胆石を挙げるでしょう。しかし、胆嚢で起こる病気は胆石だけでなく、様々な病状があるのです。

胆石症

胆石症は、胆嚢や胆管内に結石ができる病です。結石といえば、多くの人は尿路結石や腎臓結石を思い浮かべるでしょう。尿路結石などは肉類の食べ過ぎによりシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムが結晶化したものですが、胆石症の場合は尿路結石とは違い、胆嚢内のコレステロールが原因となります。

胆汁内のコレステロールが多過ぎる場合や、胆嚢の収縮機能が衰えた場合など、胆嚢内に残ったコレステロールが凝固し、固い胆石へと変わるのです。コレステロール系結石以外にも、細菌や加齢が原因となるビリルビンカルシウム系結石や、ビリルビンの過剰や胆汁酸の濃度低下が原因となる黒色石といった種類の結石も存在します。

胆石症は、胆嚢と胆管のどちらに結石ができるかで、症状の現れ方が異なります。

  • 胆嚢結石・・・多くの人は無症状ですが、上腹部の違和感や膨満感を訴える場合があります。また、通常の腹痛との違いとして挙げられるのが胆石疝痛(たんせきせんつう)です。差し込むような腹痛が現れ、脂肪分の多い食事を摂ると上腹部や右の肋骨の下あたりに痛みが現れる場合があります。背中や右肩に痛みやコリが発生することも特徴です。放置すると細菌感染による急性胆嚢炎や、胆石が胆道に入り込むことで起こる肝機能障害や黄疸などが現れやすくなります。
  • 胆管結石・・・胆管結石とは、胆管内に結石ができる病です。胆嚢結石とは違い、腹痛や発熱といった自覚症状が出やすいのが特徴です。胆石が胆汁の流れを塞いでしまうので、胆汁が逆流して血中に流れてしまい、黄疸などの症状が現れます。
    ほかにも、細菌と一緒に血液を流れることでの敗血症や菌血症、さらには意識障害やショック状態をきたす急性閉塞性可膿性胆管炎や急性膵炎などの症状を誘発させる可能性があるのです。

●症状
胆嚢結石・・・ほぼ無症状。黄疸・上腹部の違和感や腹部膨満感・背中や右肩のコリや痛み・発熱
胆管結石・・・黄疸・黄疸尿・みぞおちへの腹痛・背部痛・吐き気・発熱・意識障害

●検査方法
腹部超音波検査・MRI検査・CT検査・ERCP検査

●治療方法
症状が軽度の場合・・・保存的治療(薬で胆石を溶かす・衝撃波で破砕)
症状が重度の場合・・・胆石摘出手術・胆嚢摘出手術

胆嚢炎

胆嚢炎は、前述した胆石と深い関わりがあります。胆嚢炎は、胆嚢内で細菌が繁殖し、胆嚢が炎症を起こすことで発症します。胆嚢内に胆石があると、胆汁の流れが悪くなるため、胆嚢内で細菌が繁殖しやすくなります。そのため、胆石があることで胆嚢炎になるリスクが高まるのです。

胆嚢炎の症状は、主に腹痛・発熱・黄疸の3つです。みぞおちあたりに痛みがあり、さらに発熱や黄疸が見られた場合は胆嚢炎を疑ったほうがよいでしょう。
急激に症状が現れた場合は「急性胆嚢炎」、症状がある程度落ち着いているものの、痛みや発熱といった症状が続いている場合は「慢性胆嚢炎」です。慢性胆嚢炎の場合、炎症によって胆嚢組織が傷つけられ、胆嚢が萎縮している場合もあります。萎縮が進むと摘出しなければならないため、早期に治療を受ける必要があります。

●症状
黄疸・みぞおちのあたりの腹痛・発熱

●検査方法
血液検査・腹部X線検査・超音波検査・CT検査・MRI検査

●治療法
症状が軽度の場合・・・輸液や抗生物質の投与
症状が重度の場合・・・胆嚢ドレナージで胆汁を排出し、胆嚢を摘出する。腹腔鏡手術で胆嚢を摘出する。

胆嚢ポリープ

胆嚢ポリープとは、胆嚢内にできる隆起物です。胆嚢内にできたとしても自覚症状はなく、胆嚢の機能性に悪影響を及ぼすことはありません。しかし、中には悪性腫瘍である癌の場合もあるため、ポリープの大きさや自覚症状には注意しなければなりません。悪性腫瘍となる可能性があるのが腫瘍性ポリープ、特に健康には問題ないのが非腫瘍性ポリープです。

  • 腫瘍性ポリープ・・・陽性の腺腫と、陰性の癌の2種類があります。陽性の腺腫は癌とは違い健康を害する恐れはありませんが、大きさが1cmを超えると癌化する恐れがあります。1cm以下の腺腫であった場合は経過観察を行い、徐々に大きさが増している場合は手術によって摘出します。
  • 非腫瘍性ポリープ・・・胆嚢粘膜にコレステロールが沈着することで現れるポリープです。胆嚢ポリープの90%がこのタイプのポリープです。放置しても健康に影響は及ぼされず、癌化する心配もほぼありません。

●症状
ポリープが小さい場合、症状は現れない。ポリープが大きくなった場合、黄疸・体のかゆみ・食欲不振・倦怠感・腹痛・発熱・体重減少など胆管癌と似た症状が現れる。

●検査方法
腹部超音波検査。大きさが1cmを超える場合、造影CTや超音波内視鏡検査を行う。

●治療方法
良性の腺腫や非腫瘍性ポリープの場合必要なし。陰性の癌だった場合、胆嚢の摘出手術を行う。

胆嚢癌

胆嚢癌とは、胆嚢にできる悪性腫瘍のことです。前述した胆嚢ポリープの中でも、検査結果が陰性だった場合、この胆嚢癌だと診断されます。
胆嚢癌はほかの癌に比べても予後の悪い癌であり、治療をしても再発する確率が高いのが問題です。胆嚢に接している肝臓や胆管、さらにはリンパ節に転移し位置の遠い臓器にまで癌が広がることがあり、胆嚢・胆管癌の5年生存率は30%以下しかないとされています。

胆嚢癌と深いかかわりがあるのが、胆石症です。胆嚢癌患者のおよそ60%がこの胆石症を患っており、一度胆石症になった人や、胆石が大きい・胆嚢内に多い人、石によって胆嚢で痛みがあるという人は要注意とされています。先天異常である「膵胆管合流異常」や、大きさが10cm以上か付け根が太い胆嚢ポリープなども、胆嚢癌を患う可能性が高いといえます。

●症状
黄疸・白色便・黄疸尿・体のかゆみ・腹部の不快感・体重減少・食欲不振・吐き気・みぞおちや右脇腹の腹痛と発熱

●検査方法
腹部超音波検査・血液検査(腫瘍マーカー)・CT検査・MRI検査・PET検査・超音波内視鏡検査・直接胆道造影・胆道鏡

●治療
胆嚢や胆管の切除。および癌腫瘍が転移した肝臓や膵頭十二指腸、転移した臓器や組織の切除(術前に胆管ドレナージや門脈塞栓術を行うこともある)・抗がん剤・放射線治療

胆管癌

胆管癌とは、胆嚢から腸へと繋がる胆管か、胆嚢から肝臓へと繋がる胆管の粘膜に現れる癌です。この内、肝臓内にある胆管を「肝内胆癌」、肝臓の外に出ている胆管を「肝外胆癌」と呼びます。

  • 肝内胆癌・・・腫瘤と呼ばれる癌の塊を作りながら大きくなる傾向があります。肝臓の左葉や右葉を超える場合、または肝門に近いかどうかにより、手術範囲が変わってきます。
  • 肝門部領域胆管癌(肝外胆癌)・・・肝門部から胆管、門脈、肝動脈と、肝門部から胆嚢管手前までの複雑な形状をしている箇所にできる癌。癌の発育形態で最も多いのが、胆管上皮から染み込むように広がる「浸潤性発育」です。また、胆管内でキノコのような形で大きくなる「胆管内発育」と呼ばれる形態もあります。
  • 遠位胆管癌(肝外胆癌)・・・胆嚢管から乳頭部の手前までの間にできる癌。膵臓へと広がりやすい傾向が高い癌です。癌の発育形態は肝門部領域胆管癌と同じく「浸潤性発育」と「胆管内発育」の2つが挙げられます。
    胆管癌の5年生存率はおよそ26%と、胆嚢癌と同様に予後の悪い癌です。自覚症状がなく、進行した状態で見つかることもあるため、気づいた時には多くの臓器へ転移していたということもあるのです。また、一般的に癌のできた部位が肝臓に近く、上部であるほど予後が悪くなるとされています。

●症状
黄疸・白色便・黄疸尿・体のかゆみ・体重減少・食欲不振・吐き気・倦怠感・みぞおちや右脇腹の腹痛・発熱・肝機能障害

●検査方法
腹部超音波・血液検査(腫瘍マーカー)CT検査・MRI検査・PET検査・直接胆道造影・胆道鏡・超音波内視鏡検査・管腔内超音波検査・磁気共鳴胆管膵管撮影

●治療方法
胆管切除。および周辺の肝臓や十二指腸、胆嚢を切除。リンパ節郭清(術前に胆管ドレナージや門脈塞栓術を行うこともある)・抗がん剤・放射線治療

胆汁うっ滞

胆汁うっ滞は、肝機能障害による症状の1つとしても知られています。肝臓で作られる胆汁が十二指腸へと流れず、肝臓や胆管内で胆汁が停滞・逆流してしまう症状です。
原因は肝炎・原発性胆汁性肝硬変・アルコール性肝障害・薬物性肝障害などの肝機能障害のほか、胆管結石や嚢胞、胆管狭窄症など、胆管に異常がある場合も挙げられます。

●症状
黄疸・全身のかゆみ・黄疸尿・白色便・脂肪便・吐き気・体重減少・右上腹部の痛み・発熱

●検査方法
腹部超音波・血液検査・CT検査・MRI検査・ERCP・MRCP・HIDAスキャン

●治療方法
薬物療法・胆嚢摘出手術・狭窄した胆管を広げるステントの設置

原発性胆汁性肝硬変

原発性胆汁性肝硬変とは、肝臓内の小葉間胆管から隔壁胆管にいたる部位で胆管が破壊されることで発症します。胆管が破壊されることで、前述した胆汁うっ滞が発生し、最終的には肝硬変へと発展する病です。
原発性胆汁性肝硬変とは、厳密にいえば肝硬変とは異なります。医療技術が今ほど発展していない時代の名残であり、現在では肝硬変とこの原発性胆汁性肝硬変は検査によって明確に診断できます。肝硬変となる前に検査で判別できるので、治療によって肝機能の回復が行えます。発症する原因は明確にはわかっていませんが、免疫反応の異常によって起こる「自己免疫疾患」であるという見方が有力です。

●症状
黄疸・白色便・黄疸尿・強烈な体のかゆみ・倦怠感・消化管出血・門脈圧亢進による脾腫・血小板減少・骨粗しょう症・むくみ・腹水・意識障害

●検査方法
腹部超音波・血液検査・病理検査による肝生検

●治療方法
症状が軽度の場合・・・ステロイド薬やウルソデオキシコール、抗ヒスタミン剤の使用・食生活の改善(脂肪を摂りすぎず、銅を多く含む食材の貝類、レバー、キノコ類を避ける)
症状が重度の場合・・・肝移植

胆嚢・胆管の病に関わる肝機能障害

黄疸や体のかゆみが現れた場合、多くの人は胆嚢や胆管による病変だと考えます。しかし、実際には原発性胆汁性肝硬変などのように、肝臓の病変が原因である場合もあります。胆汁うっ滞による症状が現れた場合、肝臓への検査も忘れずに医師へ依頼しましょう。

 
本当に怖い肝機能障害の対策ガイド