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アルコールの摂りすぎ

欧米人に比べて、日本人がなりやすいと言われるアルコール性肝機能障害。ここではその症状を分析しながら、肝機能を向上させるために必要なことを学んでいきます。

アルコール性肝機能障害とは?

アルコール性肝機能障害は、長年にわたり過度な飲酒を続けることで、肝臓の機能に障害をきたしている状態を指します。

アルコールを摂取すると肝臓で分解されますが、アルコール量が多くなり、肝臓を酷使することで、肝臓の機能が弱まっていきます。また、アルコールを分解する過程で出る代謝物(アセドアルデヒドなど)も直接、肝臓に悪い影響を与えています。

日本人は体質的にお酒が弱いって本当?

一般的に、日本人は欧米人に比べて肝臓の分解能力が弱いとされています。

そして、お酒が強いか弱いかは、アルコールを分解する「アルコール脱水素酵素」の量によって決まります。

飲酒の機会が増えれば、肝臓で「アルコール脱水素酵素」が増量されますが、日本人の約半数は、この酵素を合成する遺伝子を生まれつき持っていないということです。

アルコール性肝機能障害の場合、初期症状ではアルコール性脂肪肝となりますが、それをさらに放置し、過度の飲酒を続けているとアルコール性肝炎へ、さらにアルコール性肝線維症になり、やがてはアルコール性肝硬変へと発展していきます。

肝機能の向上のためにしたいこと

このアルコール性肝機能障害の場合の肝機能の回復方法は、ズバリ、禁酒です。

禁酒をすると、明らかに肝機能が向上していくのが分かります。診断でアルコール性肝機能障害と診断されたら、お酒を止めることが最善の方法でしょう。

まだアルコール性肝機能障害になっていない人でも、過度な飲酒を続けているとアルコール性肝機能障害になる可能性が高いと言えます。ちなみに、この症状には「自分はお酒に強いから大丈夫」という基準はありません。

肝臓のことを考えれば、お酒をたくさん飲める人でも、ビールなら大瓶1本、日本酒なら2合以下に留めておくことをオススメします。

アルコール性脂肪肝(AFL)とは?

アルコール性脂肪肝とはアルコール性肝障害の一種で、AFL(alcoholic fatty liver)とも呼ばれる疾患です。

肝臓は脂肪を代謝させる役割を担う臓器ですが、アルコール性脂肪肝になると脂肪代謝能力が低下し、血液中に存在する中性脂肪である遊離脂肪酸や、中性脂肪が体内に溜まりやすくなります。

そのため、アルコール性脂肪肝自体ではなく、脂肪代謝能力が低下することによって発症する疾患に危険性があるとされています。アルコール性脂肪肝を発症すると、悪性腫瘍の発生率が高まり、その確率は1.9倍になると報告されています[1]。

アルコール性脂肪肝の原因

アルコール性脂肪肝の原因が、アルコールの摂りすぎであることは間違いありません。毎日アルコールを摂取している方、大量にアルコールを摂取する方に発症しやすい疾患です。

また、肥満体型の方に発症しやすく、BMIが25を越えると発症率は50%になり、30を越えると75%になると報告されています[2]。

アルコールは脂肪細胞の脂肪合成能力を高め、脂肪を代謝させる肝臓に負担をかけます。そして、体内に脂肪が蓄積されますが、そのときに、肝細胞が変化する、肝細胞が細胞死するなどの症状が発生し、肝臓に働きかける白血球が活性化されます。

白血球が活性化されることで、炎症を引き起こす「サイトカイン」という物質が発生し、肝臓に炎症をもたらすのです。

アルコール性脂肪肝の症状

  • 腹部の膨満感
  • 右わき腹の痛み
  • 倦怠感

これらの症状がみられることもありますが、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれているだけ

あり、自覚症状はないことがほとんどです。大抵の場合は、腹部の超音波検査で発見されます。

アルコール性脂肪肝の症状としては、肝臓が脂肪を蓄える、というものが主となっていて、アルコールの摂りすぎを控えることで比較的簡単に治ります。

アルコール性肝炎(AH)とは?

アルコール性肝炎は、アルコール性脂肪肝が重度になり発症する疾患です。この疾患には性差があり、女性は男性よりも少ないアルコール量で発症しやすいと言われています。

アルコール性肝炎に発展してしまうと、再発することが多く、その理由としては「アルコール依存症」になっている方が少なくないことが挙げられます。

肝臓の疾患としては重度の疾患ですが、アルコール性肝炎の中でも「重症型アルコール性肝炎」と呼ばれる状態になると、死亡する可能性も出てくる危険な疾患です。

静脈の通り道である「門脈」という部分に炎症が起き、その炎症の度合いによってアルコール性肝炎の重症度が計られます。

アルコール性肝炎の症状

  • 食欲不振
  • 体のだるさ
  • 発熱
  • 黄疸
  • 右上腹部の痛み
  • 尿の変色
  • むくみ
  • 腹水

アルコール性肝炎では、アルコール性脂肪肝では見られなかった症状も、はっきりと現れ始めます。肝臓が腫れているため、右側の上腹部に痛みが感じられることが多く、尿の色が赤みを帯びた茶色に変色します。

また、ひどくなるとむくみや腹水などの症状が発生しますが、肝臓の働きの低下によって、「アルブミン」という物質が減少している証です。

アルコール性肝炎の治療

アルコール性肝炎の治療方法は、アルコールを摂りすぎないことです。これが効果的な治療法で、病院では「抗酒剤」という治療薬が使用されることがあります。抗酒剤は、吐き気などを催させることで、アルコールを摂取できない状態にする、という薬です。

また、栄養療法が用いられることもあり、タンパク質とカロリー、ビタミン、ミネラルが多い食事を摂るように指導されます。これは、アルコール性肝炎によって栄養素が不足していることがあるためです。

重症アルコール性肝炎に進行していた場合は、ステロイドの投与や白血球の除去、血漿の交換などの治療が行われます。

アルコール性肝硬変とは?

アルコール性脂肪肝がアルコール性肝炎になり、最終的にアルコール性肝硬変へと進行します。アルコール性肝炎が重症アルコール性肝炎に進行しなかった場合、アルコール性肝硬変を発症する可能性が高いとされています。

アルコール性肝硬変になるアルコール量の目安としては、次のようになっています[3]。

  • 日本酒約7合を10年以上摂取し続ける…20%の発症率
  • 日本酒約7合を15年以上摂取し続ける…50%の発症率

これは男性の場合の発症率ですので、アルコール性肝炎同様、女性の場合は上記よりも少ないアルコール量でアルコール性肝硬変へと進行します。目安としては、男性の2/3程度のアルコール量だと言われています[4]。

アルコール性肝硬変の症状

アルコール性肝硬変の症状は、アルコール性肝炎の症状に加えて、次のような症状が発生する可能性があります。

  • 吐血
  • 下痢
  • 失禁
  • 意識障害
  • 傾眠

体は全体的に栄養状態が悪くなり、腹水による腹部膨満、むくみが起こり、意識がぼんやりとしてきます。最終的には意識障害を起こし、昏睡状態に陥り、死亡に繋がる可能性もあるため、非常に危険な状態です[5]。

アルコール性肝硬変の治療

アルコール性肝硬変は完治させることがとても難しい疾患ですが、アルコールの摂りすぎを止めることによって、症状が改善する可能性もあります。

ただし、アルコール性肝硬変を発症した方は、アルコールを止めることができない状態になっている場合も多く、断酒によって一度は改善しても、再度アルコールを摂取することで、アルコール性肝硬変を再発させることも少なくありません。

病院では栄養療法を中心に治療が行われ、たんぱく質の制限や、アミノ酸製剤という治療薬の投与が行われます。肝臓機能の低下によって発生するむくみや腹水を改善するために、利尿剤なども使用されるでしょう。

肝がんとは?

アルコール性肝がんは、アルコール性肝硬変から発症する可能性がある疾患ですが、その可能性を高める要因として、糖尿病や肥満などが挙げられます。また、女性よりも男性の方が、アルコール性肝がんを発症する確率が高いとされています。

肝がんの原因

肝がん自体はアルコールの摂りすぎ以外の原因からも発症し、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスに感染することも、肝がん発症のリスクを高めます。また、慢性肝炎の方も肝がんになりやすい状態です。

近年はウイルスに対する治療が進んできているため、肝がんの中でも、B型、C型肝炎ウイルスによる発症例は少なくなってきているようです。その代わり、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎などから進行した肝がんが増加しています[6]。

アルコールが肝がんを引き起こす原因としては、アルコールによってNK細胞の働きが低下して、がんに対する免疫機能を監視する働きが、抑えられているのではないかと考えられています。

肝がんの症状

肝がんだけの症状を考えれば、特に自覚できる症状はないと言われています。もし自覚症状があるとすれば、それはアルコール性肝炎や、アルコール性肝硬変などの症状です。

そのため、食欲不振や倦怠感などを覚えることがありますが、それらは肝がんの症状ではない可能性が高いでしょう。

肝がんは自覚症状がない疾患ですので、人間ドックや健康診断、体の不調により通院した際の血液検査によって発見されることがほとんどです。

肝がんの治療

初期の肝がんであれば様々な治療法があり、最も完治率が高いのは手術です。切除手術や肝移植手術が行われます。

また、ラジオ波を使って腫瘍を焼く方法、カテーテルで抗がん剤を投与する方法、放射線療法、薬物療法なども考えられるでしょう。

アルコール性肝機能障害により引き起こされる合併症のリスク

アルコール性肝障害は大量にアルコールを摂取することで起こりやすくなる障害です。肝臓の細胞が常に変化し続け、肝細胞の変性・壊死を起こし、細胞間質細胞が線維化するなどして肝臓の働きが衰えていきます[7]。

アルコール性肝機能障害には「アルコール性脂肪肝」「アルコール性肝線維症」「アルコール性肝炎」「アルコール性肝硬変」の4つの状態に分けられます。ウイルス性肝炎を患っている場合、肝硬変から肝細胞がんを合併しやすいと言われています。

アルコール性肝機能障害によって引き起こされる合併症については、初めのうちは無症状から始まり、次第に発熱や疲労などがみられるようになります。

発熱や疲労などの症状は一見肝機能障害とは関係がないように思えますが、「黄疸」がみられると皮膚や白目などの白い部分が黄色くなります。黄疸は肝臓で代謝されるビリルビンという色素が体内に増加し、皮膚などが黄色に染まる症状です[4]。

それらの症状が進むと、肝臓に「圧痛」や「痛み」が生じます。体内で肥大していくと、消化管出血などを起こす可能性が高まります。肝臓の炎症(アルコール性肝炎)も全体の約10%から35%に起こります。

アルコール性肝障害が進むと、いわゆる「敗血症」と呼ばれる症状(エンドトキシン血症)などを伴い、1ヶ月以内に死亡する重症型アルコール性肝炎と呼ばれる病態のリスクも高まります[8]。

肝臓機能が正常に機能を果たさなくなっていくと、細胞がだんだんと線維化し「肝硬変」と呼ばれる症状が起こります。肝硬変は肝臓が硬くなっていく病変であり、全体の約10%から20%に生じる症状で、肝臓の内部構造が破壊されていき、最終的には肝臓そのものが縮小してしまいます。

肝硬変になると元の大きさに自然治癒することはなく、肝臓が代謝機能を失ってしまい、さらに重篤な合併症を併発するおそれがあります。血液中のタンパク質であるアルブミンが減ることで体液が腹部に貯留する「腹水」や、手足のむくみなどが現れやすくなります。

肝性脳症も重篤な合併症の一つです。肝臓が損傷した結果、老廃物を血液から取り除く機能が低下するため、脳機能に異常が生じる脳症です。眠気、錯乱など脳の異常を示すさまざまな症状がみられ、最悪の場合昏睡状態に陥ることもあります[9]。

門脈圧亢進症は、肝臓に向かって流れる門脈(静脈)が狭まったり閉塞するなどして、門脈内の血圧が上がることです。門脈圧亢進症が進むと腹水や消化管出血、脾臓腫大(脾腫)などが現れます。

消化管出血は門脈圧亢進症によって引き起こされやすくなる症状で、食道や胃の静脈が拡張するために出血がみられる症状です。消化管出血が起きると吐血や血便、さらには黒いタールのような血便が出ることがあります。

肝臓が機能を失い次第に硬くなっていくと、血液が正しく血管に流れなくなり、食道の静脈などに血液が溜まってしまう場合があります。この症状は胃静脈瘤と呼ばれ、コブのような静脈瘤ができてしまいます。静脈瘤が破裂すると死に至る可能性があるため、早期発見と内視鏡検査、止血などの手術を講じることとなります。

さらに肝臓の機能が低下すると、合併症を引き起こしながら「肝不全」に至ることがあります。肝不全は腎不全に繋がる可能性を持っており、肝不全を引き起こさないよう早期治療が必要不可欠となります。

肝不全などの肝臓障害を患うと、腎臓の障害を併発する可能性があります。肝硬変から腎不全を発症すると、1ヶ月の生存率が50%まで下がってしまい、予後不良と診断されます。肝臓の障害と急性腎不全が同時にみられ、多臓器不全などを起こすこともあります。

【参考URL】

参考[1]:日本消化器病学会『アルコール性脂肪肝の原因』
http://www.jsge.or.jp/files/uploads/NAFLD_NASHGL2_re.pdf

参考[2]:日本消化器病学会『生活習慣病としての肝臓病-脂肪肝の急速な増加とその意味するもの-』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/104/4/104_4_492/_pdf/-char/ja

参考[3]:厚生労働省e-ヘルスネット『アルコールと肝臓病』
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-002.html

参考[4]:肝炎情報センター『アルコール性肝疾患』
http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/alcohol.html

参考[5]:日本消化器病学会『アルコール性脂肪肝から短期間に肝硬変に進展した1女性例』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi1964/86/9/86_9_2240/_pdf/-char/ja

参考[6]:日本消化器病学会『アルコール性肝障害を再考する』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/112/9/112_1651/_pdf

参考[7]:『アルコール性肝疾患』MSDマニュアル家庭版
http://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/04-肝臓と胆嚢の病気/アルコール性肝疾患/アルコール性肝疾患

参考[8]:『肝性脳症:診断・検査』加藤章信 鈴木一幸
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/104/3/104_3_344/_pdf

参考[9]:『IV.特殊な病態とその対応5.肝疾患で生じる急性腎不全』古市賢吾 和田隆志
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/5/99_964/_pdf

 
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